新・生物物理の最前線 日本生物物理学会編 講談社ブルーバックス
これでも理系っぽい仕事をしているので、こういう本もたまには読むことがある。生物物理といわれると「なんで生物学と物理が関係あんの?」と思う人もいるかもしれないが、結構歴史がある分野で、この本も学会創立40周年を記念して書かれている。
内容としては細胞内にある微小モーター、イオンチャンネル脳の働き、ゲノム解析などが取り上げられている、いずれもホットな話題である。
多少専門的な知識がないとついていくのはしんどいかも知れないが、これでも相当やさしく書いてあるなと思った。
(余談だが)ブルーバックスは難易度に結構差があって、一般向けと謳っていながら、とても高度な内容だったりすることがあるので題名で判断すると読みづらくてきつい思いをすることがあるかもしれない。しかし、これだけの点数をもつ科学書のシリーズは他の出版社からはでていないし、値段も1000円程度でほとんど手に入るため、場合によってはとってもお買い得となることもある。
コレリ大尉のマンドリン
乏しい私の経験から言って、映画化された海外作品の原作はだいたい読むに値するものが多い。これも昨年日本でも映画が公開された。
さて、この作品は第2次大戦中のアドリア海に浮かぶギリシャの島、ケフェロニア島が舞台だ。平和でのどかな島にある日、イタリア軍とドイツ軍が進駐してくる。
島の娘ペラギアはイタリア軍のコレリ大尉と恋に落ちるが、時代の波は容赦なく2人を襲うという話かと思ったが後日談がしっかり書かれていて、質量ともに満足できる内容であった。
ちなみにコレリはイタリアの作曲家コレリ(コレッリという表記も見かける)し、ドイツ軍のウェーバー中尉もドイツの作曲家ウェーバーを暗に示している(と解説に書いてあった)。
驚くべきショスタコービッチ 筑摩書房
昨年夏より、突然ショスタコービッチに目覚めてしまった。それ以来、CDを買いまくり(昨日調べたら、20枚以上あった・・・)、演奏会に出かけ、CD屋でCDをチェックし・・・といったことが習慣となってしまった。
というわけでショスタコ関係の書籍もチェックしていたので、図書館でこの本をすぐに発見した。すでにショスタコービッチの証言」(中公文庫)を読んでは
いたが、さらにショスタコの詳細に触れているらしいので、分厚い本であるにも関わらず借りてしまった。
本は大きくわけて3つの部分からなる。一つは交響曲13番「バビ・ヤール」作曲にまつわる話。2つめはショスタコと女性の話(3人の妻と係わり合いの
あった女性のこと)3つめはショスタコとサッカーの話となっている。
なかでもショスタコが大のサッカーマニアで、万障繰り合わせてサッカー観戦にかけつけたり、サッカーを堪能したあとに傑作が生まれていたりとか、サッカーの試合を見終わってから亡くなったとか、ショスタコの意外な一面がわかった。
おなじ著者による、ショスタコの伝記があるらしいのだが、日本語未訳らしい、なんとかしなくては(もしかしてロシア語版しかない???)!
キーワードで解く初歩の死活 小坂秀二著 日本棋院
昨年春より囲碁を始めた。とは言ってもまだ対局はPC上のみで人と対戦したことはないが(まあまだそこまでの実力ではないのですが)。
とは言っても入門書3冊くらいは読んだし、だんだんいろいろなことが分かってくるとそれはそれで楽しいものだ。
だが、ルールを覚えた次の段階が問題で、どうやっていけばいいのかよく分からない。入門と初級、初級と中級(区分けはいいかげんだけど)をつなぐ本がなかなかないのが現状である。
そんな悩みに答えてくれるのがこの本だ。基本的なルールをおぼえたあと、鵜呑みになりがちな手筋や死活などを「なぜそうなるのか」「そうしないとどうなるのか」について懇切丁寧に解説している。
同じ著者の本としては「上手な初心者」「上手な初心者パート2」(日本棋院→もしかしたら品切れかも)等がある。
アジアパー伝 鴨志田穣、西原理恵子 (講談社)
この2人、もしくは仲間の書いた本を書店で見つけると、自動的にレジにもっていってしまうようになってしまっています。この本は1400円もしたのに、面白くてあっという間に読み終わってしまって、ホント困った本です。
この2人は夫婦なんですがサイバラの方が圧倒的に有名です。文章は鴨志田氏、マンガはサイバラが書いていますが、まったく内容は異なっています。鴨志田氏はタイに居を構えてカメラマンをしているらしいのですが、そこに至るまでの自分史のようなものが書かれています。
はまっている人にはおすすめですが、そうでない人はあまりおすすめしません。お??なんでこんな本第1回目から紹介してるんだぁ!!!次回はまともな本(私のイメージにぴったりの純文学など・・・)を紹介しますね。
小出楢重随筆集 岩波文庫
小出楢重・・・大正から昭和にかけて活躍した画家です。彼の作品も結構好きなのですが、随筆も面白い。
小出楢重随筆のおもしろさはどこかとぼけた味にあると思います。本人がいやだとおもっていることを書いている割にはどこかそれほど深刻にうけとめていないようなひょうひょうとしたところがうかがえます。
自分の日常についてしるしたものや、彼の芸術論も読むことができます(ちょっと取っつきにくいと思いますが)。
結構岩波文庫からは芸術家の手紙や随筆集が出ていますが、美術に限らず、その道を究めた人というのは文章を書かせても面白いのだなと思わせる1冊です。
三好達治随筆集 岩波文庫
三好達治と言えば超有名な詩人ですが、随筆もまた味わい深いものがあります。ところどころに彼の詩を理解するヒントのようなものもちりばめられていて興味深い一冊です。達治が鳥好きだったのもこの本を読んで知りました(彼の詩には鳥をとりあげたものが結構多い)。
話は大幅に横道にそれますが、三好達治の詩との出会いは男声合唱を通してでした。もちろん三好達治の名前は教科書等を通じてしっていましたが、彼の詩にどっぷりつかって、じっくり観賞したことなどありませんでした。
合唱曲に限らず、意外と歌などは詩の内容など把握していなくても結構歌えたりします(こういう音楽論については後日またじっくりと)。
しかし、彼の詩はなぜか違いました。もちろん作曲者(多田武彦)の力も大きいのでしょうが、なぜか私にはこころに残る詩ばかりだったのです。
そのほかにも男声合唱を通して草野新平とか、中原中也とかいろいろな詩人の詩と接してきましたが、やはり私のベストは「三好」です(断じて三善ではない)。
日本の歴史(岩波ジュニア新書 全9冊)
岩波と言えば「岩波文庫」ですが、どうも取っつきにくい・・・しかしいいのが、あるんですよ、これが。それは岩波ジュニア新書です。「ジュニア」とあるので、「こどもの読む本か・・・」と敬遠しがちですが割ときちんとできている本も多くあります。これもその一つだと思います。まだ古墳時代と飛鳥・奈良時代の部分しか買っていませんが(読み始めたのは飛鳥・奈良時代のみ)、大人が読んでも充分読むに耐える内容となっています。もちろん歴史専攻の人や歴史に詳しい人にとってはやや物足りなさが残るでしょうが、歴史は好きだけどところどころ知識に欠落があると感じているような人にはおすすめです。
科学は冒険! P・J ドゥジャンヌ (ブルーバックス)
高分子物理の分野でノーベル賞を受けた著者がフランスの高校を巡って講演をしたときの記録をまとめたものです。内容的には初歩的なものですが、科学に対する姿勢、科学と自分の関わり、そして教育論について書かれており、興味深く読める一冊です。
火の車板前帖 橋本千代吉 (ちくま文庫)
草野心平と言えば日本を代表する詩人の一人ですが、その彼が戦後の一時期、「火の車」という居酒屋をやっていたことがあります。彼の郷里出身の筆者が板前として雇われますがこの居酒屋、ただの居酒屋じゃあない。文士や出版関係者などが心平と絡み合って夜毎大騒ぎが・・・昔はこういう雰囲気だったのだなあとしみじみ読ませる内容です。
心平が冒頭に文章を寄せていますが、筆者への愛情がにじみ出ていて心にしみいります。
カメラの中のモノローグ 埴谷雄高、猪熊弦一郎、武満徹 マリオ・A (集英社新書)
埴谷雄高、猪熊弦一郎、武満徹へのインタビュー集。それぞれ日本を代表する小説家、画家、作曲家だった(3人ともすでに故人)が自分たちの芸術論を語る。私は歌・合唱をやっている関係で作曲家の武満徹のパートは特に興味深く読んだ。日本人なのに、音楽と言えばなぜ西洋起源の音楽をやるのか。個人的には常に問題として頭にあるのだが、武満徹も同じ様なことを(私よりははるかに高いレベルですが)考え、そして西洋、日本音楽などという枠を越えたところまで思考が及ばせていたのはさすがというべきでしょう。また彼の日常についても知ることができ(なかなか芸術家の日常は語られることは少なく、ましてや自ら語ることはさらに少ない)興味深かく読むことができました。
三流役者のニッポン一人旅 殿山泰二 (ちくま文庫)
あなたは殿山泰二という役者をご存じでしょうか?映画を中心に活躍していた名脇役です。主役を張ることはなかったけれど異様に存在感のある役者でした。だいたい悪い奴の役が多くて、良い印象をもっていない人が大半だと思いますが。またその一方でジャズ好き、読書好きとしても有名で、著作も結構あり、これもその中の一冊です。
内容は日本の旧色町を巡って楽しい思いをしようと一人で旅をするという旅行記のようなものですが、ほんとかどうかわかりませんがほとんど不首尾に終わり、期待はずれでとほほな思いをするのですが、これが笑える。文体もなんとなくノリがよくって、さすがジャズファンだなあと思わせるところが良いです。
もう10年くらい前に亡くなってしまった人ですが、今生きてたら85歳!!!こんな人がこの頃にこんな事を書いていたとは・・・驚きです。
直感サバンナ ゲッツ板谷 (二見書房)
ああっ、また買ってしまった・・・著者は第1回のアジアパー伝の絵をかいているサイバラの友達でサイバラによれば「立川のバカ不良」なのだが、あまりにおっかしい内容なので4回くらい笑いころげてしまった。語り口は特徴があり、面白い。しかし・・・
風の男 白洲次郎 青柳恵介 (新潮文庫)
最近ちょっとお休み状態ですが、一時期白洲正子の本を読みあさっていた時期があります。白洲次郎は正子の夫に当たる人ですが、波瀾万丈というか、気持ちよくなるくらい思い切り生きた人でした。その彼の語録をまとめるということで作者が正子から依頼を受けて始めたようですが、結局伝記のようになってしまったようです。
現代ではもう現れることのないようなスケールをもった人間であることは間違いありませんし、挿入されている写真の風貌は独特であり、やはりただ者ではなかったと充分に感じさせます。
ぶってよ、マゼット 池田理代子 (中央公論社新社)
池田理代子と言えばやっぱり「ベルサイユのばら」。その彼女が47歳にして東京音楽大学声楽科に正規の学生として入学、そして卒業するまでをつづったエッセイである。入学とほぼ同時に結婚した夫とのエピソードも織り交ぜながら話は進んでいく。しかし、いったん決めたらとことんという彼女の行動には圧倒される。
題名はモーツァルトのオペラ「ドン・ジョバンニ」の有名なアリアの名前(でも私自身聞いたことがない、あくまでも著者の受け売り)から取っている。
Cocktail Technique(カクテル・テクニック) 上田昭男 (柴田書店)
突然だが、最近のマイブームはピアノとカクテルだ。ピアノは家にピアノがあるからという理由ではじめたが、カクテルはひょんなことからあるバーテンダーの作っているHPにアクセスしたことから始まった。
今ではメジャーカップやシェイカーなどを手に入れて少しずつカクテルを作ったりなんぞしている。
そのHPで紹介されていたのがこの本。レシピは少ないが、説明が細かくなされていて、テクニックも写真入りで詳しく紹介されている。読んでも楽しく、実際に見ながらカクテルをつくるのも楽しめそうな1冊。
マンチェスターフラッシュバック ニコラス・ブリンコウ (文春文庫)
構成は過去、現在と交互に語られる形式。主人公の思い出したくない過去が次第に明らかになっていく過程は飽きることなく読み進むことができた。ゲイ達の生態も読んでいるだけでやりきれない気持ちにさせられるし、マンチェスターの雰囲気も知っている人には「よく書けている」という内容なのだろうと思った。ただこれって、一体どういう小説なのだろうと最後まで思いながら読み終えたのも事実。別な作品も読んでどういう作家なのかつかんでみたい。
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ところでゲイとホモの違いについて最近知ったので、書いておく。
ゲイ→女の心を持ちながら、男が好きな人々のこと。
ホモ→男の心を持ちながら、男が好きな人々のこと。
オカマ→失礼。失念したので今度調べておく。
しかし、定義の中にある”男の心””女の心”というのはなんであろうか。男は女を求める、女は男を求めるというのを男の心を持つとすれば話しは簡単だがそれが許されるとすると女の心を持つ男の心や男の心を持つ女のこころは存在し得ないことになる。
ともかく、日本と違ってアメリカなどではゲイ文学という分野まであるくらいだから(正確にどういう扱いを受けているのか不明)、彼らの心理についても詳しく語られているのだろう。個人的にはまったく関わりたくない世界だがどうなっているのか興味はある(無責任だなぁー全く)。
のら犬ローヴァー街を行く (早川書房)
個人的には動物が主人公になる小説はあまり好きではなかった。これも動物を擬人化した中途半端な小説だろうという気持ちは多少はあった。しかし、読み進んでいくうちにすっかり犬の側に立って、「人間」という動物を見ている自分に気づいた。また通常なら犬の目を通して人間について観察、批判を加えるというパターンになりがちだがこの作品はそういった意図は感じられず、それぞれの話一つ一つが味わい深く読んでいて楽しかった。
ところで動物小説と言えばいろいろあるが、子供の時に読んだので有名なのがあの「シートン動物記」シリーズだ。狼王ロボや、もの言わぬ動物達の毅然とした生きざまがつづられていたような記憶があるが(もちろん、小学校低学年でも理解できる程度)、いまあの作品達はどういう扱いを受けているのだろうか。客観的に書かれていない!などと批判されて絶版になっていたりして。こんど書店で確認してみよう(続く)。
あやし 宮部みゆき 角川書店
もっとおどろおどろしい話しばかりだと最初は思っていたが、読み進んでみるとそうでもなくそれぞれの話もハッピーエンドとまでは行かなくても後味が悪いものはなく、すっきりと読めた印象。また”あやし”も言い伝えにでもありそうなな感じが、かえってそれがリアルに感じられた。作者の現代物のミステリーはこれまでに何冊か読んでいたが、少々パンチに欠けるなあと思っていただけに予想外に楽しめた(個人的にどうも日本のミステリー作家の作品は楽しめない)。
戦闘機(上) レン・デントン 早川ノンフィクション文庫
第二次世界大戦の時、ドイツ空軍とイギリス空軍との間に繰り広げられた「バトル オブ ブリテン」について書かれたもの。上巻ではイギリス、ドイツの空軍の体制、それぞれの戦力、防空体制、軍用機に関する技術的なことまでかなり詳細に書かれている。下巻ではおそらく(まだ未読なのだった)実際の戦闘などについて触れると思われる。
古典の細道 白洲正子 講談社文芸文庫
最近マイブームとなっている白洲正子による、古典を題材にしたエッセイ集。取り上げられている人物(作品)は在原業平(伊勢物語)、小野小町など。
古典に疎い私にとって歌の意味がつかみきれず、つらかったが、平易な筆者の文章につい引き込まれ、最後まで読み通してしまった。
これまで読んだ白洲本はこれで5冊目となるが、 どこがどう魅力的なのか自分のなかで整理しきれていない。自分なりの白洲論を語れるようになるまでしばらく白洲本に浸る日々が続きそうだ。
心に残る人々 白洲正子 講談社文芸文庫
現時点における、私のマイブーム作家。ひょんなことから新潮文庫の「遊鬼」を手に取ってから、のめり込んでしまった。文芸文庫からはまだまだでているのでたくさん楽しめそうだ。
さて、内容をちょっと。小林秀雄、青山二郎といった一流の文人、芸術家との交流が描かれている。伯爵家出身の育ちのよさか、もってうまれたものか、彼らに対して臆することなく接している様子がうかがえてさわやかな気持ちがした。
青い自転車シリーズ(全5巻) 青木真紀子訳 集英社
フランスボルドーのブドウ農園の娘レア。ものすごく美しいが気性も荒い。時代は1939年。第二次世界大戦の年である。のっけから彼女も戦乱に巻き込まれる。運命の男フランソワとの恋愛を織り交ぜながら、話は進行していく。
1巻はかなり「風と共に去りぬ」に似ているが(マーガレットミッチェルの遺族から訴訟を起こされたほど)、それは物語の一部分にしかすぎない。何しろ舞台はフランス、ドイツ、アルゼンチン、はたまたベトナムにまで展開する。
歴史的記述も詳しく、たとえばナチスドイツに協力するフランス人”対独協力者”のレジスタンス(フランス人)狩りや戦後の対独協力者に対する報復などフランス人が抱えている”心の傷”にも触れている。下手な歴史書よりも得るものは多いかも。
それにしてもこの主人公はつおい!結局5巻までに両親、妹、おじ、おば、親友など、1巻では元気だった人達が戦争に巻き込まれ、亡くなっている。しかしこの悲しみにめげるどころか彼女はますますパワフルになっていくのだ。
日本語訳は5巻までだが、原書では続編がでているので、翻訳を気長に待つことにしている。
<自己責任>とはなにか 桜井哲夫 講談社現代新書
最近良く聞く言葉として「責任をとる」とか「自己責任」がある。これはさまざまなレベルにおける無責任体制に対する批判のなかから出てきたものだが、この本では日本における無責任体制の発現について日本や各国の「公私」感、歴史的考察などを通して明らかにしていく。
良く言われている、「日本だけが無責任体制」「これからは欧米と同じように自己責任」といったスローガンをそのまま受け取ることの危険性を感じた。とかく日本は過去をあまりにもあっさりと捨て去ることが多く、これまでのシステムではもうだめだから新しいアメリカで取り入れられているシステムを取り入れようといったことに走りがちだが、過去のシステムについても、これまでどのように機能してきたかを歴史的にきちんと評価し直していくことも重要だと思った。
ザ・フィフティーズ(上・下) D・ハルバースタム 新潮社
アメリカが最も輝いていた時代、1950年代の歴史がトピックスを中心に書かれている。現在われわれがアメリカに対してもっているイメージがほとんど50年代以降に形作られたことをあらためて認識させられた。また人種差別問題、東西冷戦、キューバ危機など、なんとなくわかったつもりでいた事柄でもその時代の人々にとってどういうものでまたどういう行動をとらせたのかが非常にわかりやすく書かれていた。上下で1000ページ近くにもなる大書だが、非常に読みやすく、「あたり」の一冊。
「大正百話」 矢野誠一 文春文庫
明治天皇崩御から関東大震災くらいまでの芸能人の行動をつづったものである。
芸能人と言っても落語家、歌舞伎役者、新劇役者、浪曲師・・・と言った当時の人気稼業の者ばかりで現代人のわれわれにはなじみのない世界の人達もいる。また70年以上前の人達のことなので、あまり身近にも感じない。落語家の何代目・・・と言われてもあまりぴんと来ない。しかし、芸人たちの内輪もめや醜聞などはその人の芸などあまり知らなくても十分に楽しめる。
島村抱月のあとを追って自殺した松井須磨子が女優になるまでの紆余曲折を始めとする芸人たちの生と死なども事細かに描かれていて楽しめる1冊。
「囚人狂時代」 新潮文庫
過激派テロ、スパイ処刑等の罪状で12年の刑を受け、収監された著者の獄中体験記。金属バット殺人の犯人、ホテルニュージャパンの元オーナー、三越の元社長、新宿バス放火事件の犯人・・・などの「有名人」の様子、人間関係、獄中生活の子細にわたって描かれている。著者は「わらってもらえるように書いた」と言っているが、笑いの奥に暗闇が垣間見えるような読後感であった。
読了後新宿バス放火事件の犯人が獄中自殺したというニュースを聞き、感慨深いものがあった。
哲学の練習問題 西研 (著) 川村易(画)NHK出版
哲学・・・と聞くと難解でとっつきにくいものという印象があるが、これは毎日新聞に連載されたものをまとめたもので、非常に読みやすい。哲学者1人の思想を突っ込んで把握するのは難しいが、この程度ならとっつき易く、哲学が目指すものくらいはつかめたように思う。
絶対音感と言えば、ピアノや音叉で音をとらなくても自分で音が出せる、曲を聞くとその場で採譜できたり、演奏できたりする、自分の耳に聞こえてくるさまざまな音の音名がわかる・・・などが思い起こされ、なんともうらやましい才能であると思っていた。
しかし、この本を読み進んで行くとうらやましいことばかりではないらしいことがわかってきた。聞こえる音がすべて音名になかば自動的にラベリングされていったり、ちょっとした音の狂いも苦痛に感じてしまうなど・・・
日本の音楽教育から音を感じることに関する生理学的な研究内容まで、いささか拡散気味のところはあるが、音楽にいつも触れている私にとっては自分と音楽の関わりについて見直すきっかけになった本のように思う。